4月26日合成シリカに関するセミナー、4月27日本技術士会で講演を行います!

金属不純物の測定法その2 ~比色定量法を中心に~

シリカ

合成シリカ中の金属不純物の測定法は、原子吸光光度法等の機器を用いた分析法、比色定量法に大別されます。前回は、原子吸光光度法等の機器を用いた機器分析について解説しましたので、今回は比色定量法について解説をしていきます。
金属不純物の測定は、測定方法の発展により更なる厳密化が求められています。このため、これまでの個別分析からリスクアセスメントに基づいた分析法に変わりつつありますので、そちらの動向についても解説します。

比色定量法

溶液の色の濃さや色調を、標準溶液と比較して定量する化学分析です。分析方法は、肉眼で試験管(比色管)などに採取した試料を見比べる方法や、装置に試料を透過した光の強さや吸収の程度から調べる機械的方法があります1)

機械的測定原理は、物質が電子転移によって可視部もしくは紫外部の 光を吸収するときに、吸収される光の波長はその物質の化学構造と関連するので、 物質の構造を推定し確認する(定性)ことができます。更に、吸収された光の強さを比較することにより物質の量を決定することができます。

分光光度計の構造 

機械的測定には、分光光度計(spectrophotometer)が用いられます。

分光光度計は、特定の波長 における透過光を検出して記録できる機器で、化合物の定性・定量分析に広く用いられています。

Fig1に装置の概略を示します。340nm以上の波長(可視部)を測定するときには、タングステンランプ(W lamp)を光源としプラスチックキュベット(セル)を用いられます。また、それ以下の波長(紫外部、UV)における測定には重水素ランプ(D2 lamp)を用い、石英ガラスキュベット(セル)が必要となります。

Fig1.分光光度計の装置概略2)

 

分光光度計の原理は、以下の動画で大変わかりやすく解説されています。

濃度は、前回の解説記事で述べましたLambert-Beerの法則を使って検量線から求めます。

シリカの金属不純物測定と比色定量

シリカ中の金属不純物の測定法と対象金属は、使用用途に応じて定められています。Table1にシリカの金属不純物測定に関する分析規格と対象物一覧を示します。
日本産業規格(JIS)に定められている対象金属は、すべて原子吸光光度法(原子吸光)が指定されています。また、医薬品、医薬部外品は比色定量が指定されていて、食品添加物においては、原子吸光と比色定量が種類ごとにそれぞれ指定されています。

Table1.シリカの金属不純物測定に関する分析規格と対象物一覧3),4), 5), 6),7)

医薬品

医薬品に使用されるシリカは、日本薬局方(局方)と医薬品添加物規格に規定されていて、日本薬局方に指定されるシリカは『軽質無水ケイ酸』、医薬品添加物規格に指定されるシリカは『含水に酸化ケイ素』とそれぞれ呼ばれます。詳細については、シリカと医薬品の解説記事を参照ください。

医薬品の分析は重金属(カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、水銀(Hg)等)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化カルシウム(CaO)、ヒ素(As)が、比色定量法により行われ、いずれも比較液より濃くないものと規定されています。

前処理は、重金属、酸化アルミニウム、酸化カルシウムについては苛性ソーダを用いることから、シリカ骨格内に含まれてているものも測定可能ですが、酸化鉄については塩酸を用いることから骨格内のものは測定できません。

軽質無水ケイ酸

重金属4)

1)試料0.5gに水酸化ナトリウム試液20mLを加え、煮沸して溶かす
2)室温まで冷却後、酢酸(31) 15 mLを加えて振り混ぜた後、必要ならばろ過をする。
3)水10mLで洗い、ろ液及び洗液を合わせ、水を加えて50 mLとする。これを検液とし、試験を行う。
4)比較液は水酸化ナトリウム試液20 mLにフェノールフタレイン試液1滴を加え、液の赤色が消えるまで酢酸(3+1)を加えた後、鉛標準液2.0 mL、希酢酸2 mL及び水を加えて50 mLとする。このとき鉛の濃度は、40 ppm以下であること。
5)検液及び比較液に硫化ナトリウム試液1滴ずつを加えて混和し5分間放置した後、両管を白色の背景を用い、上方又は側方から観察して液の色を比較する。検液の呈する色は,比較液の呈する色より濃くないこと。

鉄(Fe2O3)4)

1)試料0.040 gに希塩酸10 mLを加え、水浴中で10分間振り混ぜながら加熱する。

2)冷却後、L-酒石酸0.5 gを加え、振り混ぜてL-酒石酸を溶かした後、以下第2法により検液を調製し、B法により試験を行う。

第2法8)

1)フェノールフタレイン試液1滴を加え、アンモニア試液を液が微赤色となるまで滴加し、更に鉄試験用pH 4.5の酢酸・酢酸ナトリウム緩衝液20 mLを加えて検液とする。
2)比較液は、鉄標準液2.0 mLをとり、希塩酸 10 mLを加えた後、検液の調製法と同様に操作し比較液とする。

B法8)

1)検液及び比較液にL-アスコルビン酸0.2 gを加えて溶かし、30分間放置した後、2、2′-ビピリジルのエタノール(95)溶液1mlから200mlに純水で希釈したもの1mLを加えて30分間放置する。
2) 2、4、6-トリニト ロフェノール溶液3mlから→1000mlに純水で希釈したもの2mL及び1,2-ジクロロエタン20mLを加え、激しく振り混ぜた後、1,2-ジクロロエタン層を分取し、必要ならば脱脂綿上に無水硫酸ナトリウム5gを層積した漏斗でろ過した後、白色の背景を用いて液の色を比較するとき、検液の呈する色は、比較液の呈する色より濃くないこと。

アルミニウム(Al2O3)4)

1) 試料0.5 gに水酸化ナトリウム試液40mLを加え、煮沸して溶かす。
2)室温まで冷却後、水酸化ナトリウム試液を加えて50mLとしろ過する。
3)ろ液10 mLを量り、酢酸(3+1) 17mLを加えて振り混ぜ、アルミノン試液2 mL及び水を加えて50mLとし、30分間放置するとき、液の色は次の比較液より濃くない。

比較液

1) 硫酸カリウムアルミニウム十二水和物0.176 gを水に溶かし1000 mLとする。
2) この液15.5mLに水酸化ナトリウム試液10mL、酢酸(3+1) 17 mL、アルミノン試液2 mL及び水を加えて50mLとする。

カルシウム(CaO)4)

1)試料1.0gに水酸化ナトリウム試液30mLを加え、煮沸して溶かす。
2)室温まで冷却後、水20mL及びフェノールフタレイン試液1滴を加え、液の赤色が消えるまで希硝酸を加え、直ちに希酢酸5 mLを加えて振り混ぜた後、水を加えて100 mLとし、遠心分離又はろ過して澄明な液を得る。
3)この液25 mLにシュウ酸試液1 mL及びエタノール(95)を加えて50 mLとし、直ちに振り混ぜた後、10分間放置するとき、液の混濁は次の比較液より濃くないこと。

比較液

1) 180℃で4時間乾燥した炭酸カルシウム0.250gを希塩酸3 mLに溶かし、水を加えて100 mLとする。
2)この液4 mLに希酢酸5 mL及び水を加えて100 mLとする。
3)この液25 mLをとり、シュウ酸試液1 mL及びエタノール(95)を加えて50 mLとし、振り混ぜる。

ヒ素(As2O3) 4)

1)試料0.40 gを磁製るつぼにとり、水酸化ナトリウム試液10mLを加え、煮沸して溶かす。

2)室温まで放冷後、水5mL及び希塩酸5mLを加えて振り混ぜ、これを検液として試験を行う。このとき検液の濃度は5ppm以下であること。

装置

Fig2に示す装置を用いる.
1) 排気管Bに約30mmの高さにガラス繊維Fを詰め,酢酸鉛 (Ⅱ)試液及び水の等容量混液で均等に潤した後、下端から弱く吸引して過量の液を除く。
2)これをゴム栓Hの中心に垂直に差し込み、Bの下部の小孔Eは下に僅かに突き出るようにして発 生瓶Aに付ける。
3)Bの上端にはガラス管Cを垂直に固定したゴム栓Jを付ける。このときCの排気管側の下端はゴム栓Jの下端と同一平面とする。

Fig1. ヒ素試験装置10)

:発生瓶(肩までの容量約70mL)
:排気管
:ガラス管(内径5.6mm、吸収管に入れる部分は先端を内径1mmに引き伸ばす。)
:吸収管(内径10mm)
:小孔
:ガラス繊維(約0.2g)
:5mLの標線
及び:ゴム栓
:40mLの標線

操作法9)

1)発生瓶Aに検液をとり、必要ならば少量の水で洗い込む。
2)これにメチルオレンジ試液1滴を加え,アンモニア試液,アンモ ニア水(28)又は希塩酸を用いて中和した後、純水で1mLから2mLに薄めた塩酸5mL及びヨウ化カリウム試液5mLを加える。
3)2~3分間放置した後更に酸性塩化スズ(Ⅱ)試液5mLを加え、室温で10分間放置する。
4)次に水を加えて40mLとし、ヒ素分析用亜鉛2gを加え、直ちにB及びCを連結したゴム栓Hを発生瓶Aに付ける。
5)Cの細管部の端はあらかじめヒ化水素吸収液5mLを入れた吸収管Dの底に達するように入れておく。
6)次に発生瓶Aは25℃の水中に肩まで浸し1時間放置する。
7)吸収管を外し、必要ならばピリジンを加えて5mLとし、吸収液の色を観察する。この色は標準色より濃くないこと。

標準色の調製9)

1)発生瓶Aにヒ素標準液2mLを正確に加え、純水で1mLから2mLに薄めた塩酸5mL及びヨウ化カリウム試液5mLを加えて2~3分間放置した後、酸性塩化スズ(Ⅱ)試液5mLを加え、室温で10分間放置する。
2)以下前記と同様に操作して得た吸収液の呈色を標準色とする。この色は三酸化二ヒ素(As2O3) 2μgに対応する。

各試薬の調製9)
(ⅰ)  ヒ化水素吸収液

N,N-ジエチルジチオカルバミド酸銀0.50gをピリジンに溶かし100mLとする。この液は遮光し た共栓瓶に入れ冷所に保存する。

(ⅱ)  ヒ素標準原液

1)三酸化二ヒ素を微細の粉末とし、105℃で4時間乾燥し、その0.100gを正確に量り、水酸化ナトリウム溶液1mLを純水で5mLに希釈した溶液に溶かす。
2)この液に希硫酸を加えて中性とし、更に希硫酸10mLを追加し、新たに煮沸して冷却した水を加えて正確に1000 mLとし、共栓瓶に保存する。

(ⅲ)  ヒ素標準液

ヒ素標準原液10mLを正確に量り、希硫酸10mL を加え、新たに煮沸して冷却した水を加えて正確に1000 mLとする。この液1mLは三酸化二ヒ素(AsO) 1μgを含む。この液は用時調製する。

含水二酸化ケイ素

重金属4)

日本薬局方に指定されている方法と同じ方法で行います。

アルミニウム4)

日本薬局方に指定されている方法と同じ方法で行います。

鉄4)

日本薬局方と異なり、発色剤にペルオキソ二硫酸アンモニウム 0.05g 及びチオシアン酸アンモニウム試液を用います。
1)試料0.05gに水酸化ナトリウム試液20mLを加え、煮沸して溶かす。
2)室温まで冷却後、フェノールフタレイン試薬1滴を加え、液の赤色が消えるまで希硝酸を加え、更に希硝酸7mLを加える。
3)この液を煮沸し室温まで冷却後、水を加えて50mとし、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.05g及びチオシアン酸アンモニウム試液5mLを加えて振り混ぜ、5分間放置するとき、液の色は次の比較液より濃くないこと。

比較液

1)鉄標準液2.5mLに、水酸化ナトリウム試液20mL及びフェノールフタレイン試液1滴を加える。
2)液の赤色が消えるまで希硝酸を加え、更に希硝酸7mLを加える。
3)この液を 煮沸し、室温まで放冷後、水を加えて50mとし、ペルオキソ二硫酸アンモニウム0.05g 及びチオシアン酸アンモニウム試液 5mLを加えて振り混ぜる。

カルシウム4)

日本薬局方に指定されている方法と同じ方法で行います。

ヒ素4)

日本薬局方に指定されている方法と同じ方法で行います。

カルシウム4)

日本薬局方に指定されている方法と同じ方法で行います。

ヒ素4)

日本薬局方に指定されている方法と同じ方法で行います。

医薬部外品

無水ケイ酸、含水ケイ酸、含水無晶系酸化ケイ素

歯磨きや化粧品等に使用されているシリカ(無水ケイ酸、含水ケイ酸、含水無晶系酸化ケイ素)が対象となります。医薬部外品原料規格に規定されていて、重金属、ヒ素(As)、フッ素が(F)対象となり、これらは比色定量法で分析されます。

前処理は、塩酸による溶出で行うため、シリカ骨格内に残存している元素は測定されません。

重金属4)

前処理を塩酸で行っているため、アンモニアで中和を行います。

1)試料2.0gに水 30mL及び塩酸3mLを加えて20分間煮沸し、わずかに酸性となるまでアンモニア試液を加えた後、ろ過する。
2)残留物を水 15~20mL で洗い,ろ液及び洗 液を合わせ,フェノールフタレイン試液2滴及びやや過量のアンモニア試液を加えた後、紅色が消えるまで 0.1mol/L塩酸を加える。
3)更に0.1mol/L 塩酸5mL及び水を加えて100mL とし、試料溶液とする。
4)試料溶液50mLをとり第4法により試験を行うとき、その限度は、30ppm以下である。ただし、比較液には、鉛標準液 3.0mLをとる。

ヒ素 4)

溶出に塩酸を用いる点は医薬品と異なりますが、装置と試薬は同じものを用います。
試料0.40g に塩酸10mLを加え、蒸発乾固した後、更に希塩酸5mLを加えて加温し、放冷後にろ過する。これを試料溶液として試験を行うとき、その限度は。5ppm以下である。
尚、装置はFig1で示したものと同じ装置を用います。

フッ素

医薬部外品であるフッ化物配合歯磨剤には、むし歯の発生や進行を防ぐ効果があります。フッ素は、むし歯の原因菌の働きを弱め、歯から溶け出したカルシウムやリンの再石灰化を促進し、歯の表面を強化してむし歯になりにくくする働きがあります11)。しかし、薬用歯みがき類のフッ素化合物の配合量は、フッ素として1000ppm以下に抑える必要があります12)。医薬部外品に用いられるシリカの多くが歯磨き剤に用いられるため、フッ素測定が義務付けられています。

フッ素は定量法で行われ、定量法は第1法から4法まであり、第1法(塩素又は臭素)、第2法(ヨウ素)、第3法(フッ素)、第4法(イオウ)です。

フッ素は、分光光度計を用いて測定を行います。

フッ素の定量法は以下の通りです。5)

試料0.40g に塩酸10mLを加え、蒸発乾固した後、更に希塩酸5mLを加えて加温し、放冷後にろ過する。これを試料溶液として試験を行うとき、その限度は30ppm以下である。

操作法5)

1)Fig2に示す装置A の上部に少量の水を入れ、注意してCをとり、試料溶液及び空試験溶液をそれぞれ50mLのメスフラスコに移し、C、B 及びAの内壁を水で洗い、洗液及び水を加えて50mL とし、試験液及び補正液とする。
2)フッ素約 30µg に対応する試験液(VmL)、補正液(VmL)及び酸素フラスコ燃焼法用フッ素標準液(以下フッ素標準液と略する)5mLを正確に量り、それぞれ別の50mLのメスフラスコに入れる。3)よく振り混ぜながらそれぞれにアリザリンコンプレキソン試液/pH4.3 の酢酸・酢酸カリウム緩衝液/硝酸セリウム(Ⅲ)試液混液(1:1:1)30mL を加え、水を加えて50mLとし、1時間放置する。
4)次に波長 600nm 付近の吸収極大波長で,試験液,補正液及び フッ素標準液から得た呈色液の吸光度 AT、AC及びASを測定する。対照液にはフッ素標準液の代わりに水5mLをとり、同様に操作して得た液を用いる。

Fig2. フッ素試験装置13)

A:内容 500mL の無色,肉厚(約2mm)の硬質ガラス製のフラスコで、口の上 部を受け皿状にしたもの.ただし、フッ素の定量には石英製のものを用いる。
B:白金製のかご又は白金網筒(白金線を用いて栓 C の下端につるす。)
C:硬質ガラス製の共栓。ただし、フッ素の定量には石英製のものを用いる。

試料溶液中のフッ素(F)の量(mg)=標準液5mL 中のフッ素の量(mg)×(AT−AC/AS)×(50/ V)

食品添加物

二酸化ケイ素、微粒二酸化ケイ素、珪藻土

食品添加物に使用されているシリカ(二酸化ケイ素、微粒二酸化ケイ素)や珪藻土が対象となります。食品添加物公定書に規定されていて、ヒ素(As)が比色定量法で分析されます。前処理は塩酸で溶出するため、シリカ骨格内に残存している元素は測定されません。

以下の方法でヒ素は測定されます。14)

前処理

1)試料5.0gを105℃にて2時間乾燥する。
2)乾燥した試料に純水に4倍希釈した塩酸 50mLを加え、蒸発する水を補いながら、水浴上で時々振り混ぜて1時間加熱し、室温まで冷却後、ろ過する。
3)容器及びろ紙上の残留物は、水で洗い、洗液をろ液に加え、 更に水を加えて100mLとし、これをA液とする。A液20mLを量り、検液とする。このときAsとして1.5µg/g以下でなければいけません。
また、測定は、Fig1で示した装置と同じ装置を用い、食品添加物公定書では装置Bとなります。

測定は以下の手順で行います。

測定

1)検液を発生瓶に入れ、ブロモフェノールブルー試液1滴を加え、アンモニア水、アンモニア試液又は純水で4倍希釈した塩酸で中和する。
2)純水で2倍希釈した塩酸5mL及びヨウ化カリウム試液5mLを加え、2~3分間放置した後、塩化スズ(II)試液(酸性)5mLを加えて室温で1 0分間放置する。
3)次に、水を加えて40mLとし、ヒ素分析用亜鉛2gを加え、直ちにB及びCを連結したHを発生瓶に付ける。
4)Cの細管部の端は、あらかじめヒ化水素吸収液5mLを入れたDの底に達するように入れておく。次に、Aは25℃の水中に肩まで浸し、1時間放置する。
5)Dを外し、必要な場合には、ピリジンを加えて5mLとし、吸収液の色を観察するとき、この色は、次の標準色より濃くないこと。

標準色の調製

調製は検液の試験と同時に行う。別に規定するもののほか、別に規定する量のヒ素 標準液を正確に量り、発生瓶に入れ、塩酸(1→2)5mL及びヨウ化カリウム試液5mLを加えて 2~3分間放置した後、塩化スズ(II)試液(酸性)5mLを加え、室温で10分間放置する。

以下、検液と同様に操作して得た吸収液の呈色を標準色とする。

最近の動向

金属不純物は分析方法の発達から、これまで述べてきた個別分析からリスクアセスメントに基づいた分析法に変わりつつあります。リスクアセスメントとは、事業場にある危険性や有害性の特定、リスクの見積り、優先度の設定、リスク低減措置の決定の一連の手順をいいます。特に医薬品の分野では顕著で、第十八改正日本薬局方では、Table2のようにリスクアセスメントにおいて考慮すべき元素が定められています。

Table2.リスクアセスメントにおいて考慮すべき元素15)

クラスは、有害性の度合いから1~3に分かれていて、クラス1が最も有害性が高い、また、意図的に添加されたもの、そうではないものと分類され、軽質無水ケイ酸は後者で更に、経口製剤、注射剤、吸入剤に分類されます。例えば、経口製剤に使用する場合は、カドミウム(Cd)、鉛(Pb)、ヒ素(As)、水銀(Hg)、コバルト(Co)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)の各含有量の測定が求められます。更に、生産工程上配管や設備からクロム(Cr)が混入する可能性がある場合には、Crについても測定を行う必要があります。このように、従来の管理対象物質を定めて個別管理をしていく方法と異なり、製造工程から最終製品までを考慮して総合的に管理を行い管理精度を上げるという管理手法がリスクアセスメントに基づいた管理手法の根幹です。

このため上述した管理を行った場合には、医薬品各条などで規定された重金属、ヒ素など元素不純物の管理は要しない。16)ということが定められています。このため、シリカ(軽質無水ケイ酸)においても、定期的にICP発光分析等を用いて当該元素の測定を行えば、従来の旧金属、ヒ素試験は行わなくてもよいということになります。ICP等における分析により対象元素毎の含有量を測定できて、品質管理能力の向上に繋がるとは思いますが、その反面、フッ化水素酸による処理や、高価なICP発光分析装置の導入が必要となるため、頻度にはよりますが分析のための労力やコストが増大することは否めません。また、これらの分析は外部委託も可能ですが、日本薬局方、医薬品添加物規格に対応できる分析機関で行って貰う必要があります。

更に、この管理手法は将来的には医薬部外品、食品にも展開されてくるものと考えられています。

まとめ

医薬、医薬部外品、食品に使用されるシリカ中の不純物金属の分析は、原子吸光やICP発光分析等を用いた分析と比色定量法に大別されます。比色定量は、医薬品においては重金属、ヒ素、鉄、アルミニウム、カルシウム、ヒ素が、医薬部外品では重金属、ヒ素、フッ素が、食品添加物ではヒ素が分析対象となります。しかし最近は、従来の管理対象物質を定めて個別管理をしていく方法と異なり、製造工程から最終製品までを考慮して総合的に管理を行うことで管理精度を上げるというリスクアセスメントに基づいた管理手法が注目されています。リスクマネジメントを用いた管理手法は、既に医薬品では導入が始まっていて、今後、医薬部外品や食品にも展開していくと考えられています。

しかしながら、シリカの分析を行うためには、フッ化水素酸による処理や高価なICP発光分析装置の導入な必要となり、分析のための労力やコストが増大することは否めません。外部委託も可能ですが、その分コストがかかります。上述をしたように分析精度を上げることにより管理精度は上がりますが、その分コストや手間もかかります。あくまでも私個人の意見ですが、コストや手間をかけずに分析精度を上げていくことは必要ですが、分析項目を絞り込むことが必要かと思います。確かに分析項目を拡げれば拡げるほど、安全性は担保できますが、すべてをカバーすることは不可能です。このため、適切な分析項目の絞り込むための技術も並行して醸成していく必要があるものと筆者は考えます。

参考文献

1)コトバンク https://kotobank.jp/word/%E6%AF%94%E8%89%B2%E5%88%86%E6%9E%90-119776
2)京都大学 OCR 
https://ocw.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2012/04/2012_shigenseibutsukagakujikkenn_jikkenhou1-2_03-01-1.pdf をもとに筆者作成。
3)日本工業規格 JIS K1150-1994 シリカゲル試験方法 p.p. 9-12 を参考に筆者作成
4)第十八改正日本薬局方(令和3年6月7日厚生労働省告示第220号) p.p. 823-824 https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000788360.pdf を参考に筆者作成
5)医薬品添加物規格(2018)p.p. 219-220 https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000336088.pdf を参考に筆者作成
6)医薬部外品原料規格 2021 https://www.pmda.go.jp/files/000240227.pdf を参考に筆者作成
7)第9版 食品添加物公定書2018 p.p.589-590, P806, 854, https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000641285.pdf を参考に筆者作成
8)第十八改正日本薬局方(令和3年6月7日厚生労働省告示第220号)p.33 https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000788359.pdf を参考に筆者作成
9)第十八改正日本薬局方(令和3年6月7日厚生労働省告示第220号)p.34 https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000788359.pdf を参考に筆者作成
10)第十八改正日本薬局方(令和3年6月7日厚生労働省告示第220号)p.34 https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000788359.pdf から引用
11)森田歯科クリニック フッ素Q&A http://moritasika.net/faq/detail_9.php
12)フッ化物を配合する薬用歯みがき類の使用上の注意について(平成29年3月17日/薬生薬審発0317第1号/薬生安発0317第1号)
13)医薬部外品原料規格 2021 https://www.pmda.go.jp/files/000240227.pdfより引用14)第9版 食品添加物公定書2018 p.p.84-87, https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000641285.pdf
15)第十八改正日本薬局方(令和3年6月7日厚生労働省告示第220号)p.93 https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000788359.pdf から引用
16)第十八改正日本薬局方(令和3年6月7日厚生労働省告示第220号)通則34 https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000788359.pdf から引用


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