シリカに関する専門技術

金属不純物の測定法 ~シリカの前処理~
それら金属不純物をどのように抽出してどのような手法で求める方法、中でも前処理はシリカの金属不純物測定には非常に重要な操作となりますので、今回はシリカから金属不純物を抽出するための“前処理”を中心に解説します。

合成シリカと金属不純物
合成シリカの内、乾式シリカであるヒュームドシリカは、四塩化ケイ素に水素と酸素を吹き込んで燃焼させる火炎加水分解法で製造されるため、金属不純物量は非常に低いものとなります。 一方、シリカゲルや沈降性シリカなどの湿式シリカは、フュームドシリカに比べて金属不純物が多く、ケイ酸ソーダや硫酸からの原料由来が多くを占めます。特に、ナトリウムについては、ケイ酸ソーダ製造時に添加する炭酸ナトリウムからのものになります。更に、ケイ砂からの由来として、鉄、チタン、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムなどが挙げられます。

合成シリカと細孔
合成シリカの細孔は、シリカゲルのように一次粒子が集まって形成されるもの、ヒュームドシリカ、沈降性シリカのように二次粒子が集まって形成されるものがあります。また、メソポーラスシリカのように鋳型を用いる方法、多孔質ガラスのように金属をリーチアウトさせる方法と、さまざまな方法があります。合成シリカは、粒状や粉状のものが多く、これらの細孔容積や細孔径を測定する方法には、細孔にガスや液体を入れて測定を行う方法がありますが、どれも一長一短ですべてに対応できる方法は現在ありません。このため、細孔容積や細孔径を測定する場合、適切な測定法を選択する必要があります。

合成シリカと表面積
一般に合成シリカの比表面積は、BET吸着法を用いて測定されます。 BET吸着法は比表面積のほか細孔容積、細孔径、細孔径分布を求めることができるため、比表面積とあわせて合成シリカの構造決定に不可欠な分析方法となります。 また、化学工業で使われる反応触媒、コピー機のトナー、電池、インクなどさまざまな化学製品にも用いられています。

シリカと吸着
シリカは、表面や細孔を利用して物質を吸着します。この吸着機能を利用して水をはじめとして、有害ガスや重金属などの有害物を吸着、最近では二酸化炭素の吸着担体としても注目されています。 なかでもシリカゲルのような固体は、吸着等温線を用いることでその細孔構造などの物性情報を得ることができます。

シリカと植物
植物とシリカは非常に密接な関係があり、トクサやイネなどは有ケイ酸植物といわれ内部にたくさんのシリカを持っています。トクサは、ケイ酸質(シリカ)を大量に含むことから古くから現代まで天然のやすりとして使用されています。また、イネは最も身近な有ケイ酸植物で、ケイ酸は(SiO2)イネの生育を良好にするためシリカゲルやシリカヒドロゲルがケイ酸質肥料として上市されています。更に、脱穀時に発生するもみ殻には、シリカが20%程度含まれていて、合成シリカを製造するための原料としてのリサイクルが進められています。なかでもEvonik社では、コジェネレーションシステムを用いたもみ殻からのケイ酸ソーダ製造システムを確立し、このケイ酸ソーダから製造した沈降性シリカが上市されていてCO2削減にも貢献しています。

シラノール基
シラノール基は化学式ではSi-OHと表され、シリカを理解する上で非常に重要な結合になります。 更に、シリカやシロキサン結合と密接な関係があります。また、シラノール基は、シリカ単体の性質にとどまらず、材料全体の性能を作用する重要な因子でもあります。通常、シラノールは弱酸性ですが、水中で塩化マグネシウム等の2価の金属塩を添加することでプロトン(H+)を放出します。このようなプロトン放出を利用して筆者は宮崎大学との共同研究を経て、より安全性の高い湿度インジケーターの開発に成功して商品化に結び付けることができました。今後は、このの知見をプロトン輸送体に展開することで、プロトンポンプ機能を利用したATP合成や、燃料電池への利用ができるものと考えております。

中空シリカ
中空シリカは昭和40年代後半には、発泡法を用いた大量生産技術が確立されていて、コンクリートや建材用途をはじめ、接着剤、塗料等のさまざまな用途に使用されてきました。その後、平成に入りLCDや半導体基板の台頭でより高純度化、微小化や粒度分布の制御に対応するため、テンプレート法が開発されました。さらに最近では、膜厚の調製により誘電率が調整できることから、次世代通信5Gには不可欠な材料となっています。このように中空シリカは、電子材料とともに発展をしてきたといっても過言ではありません。

シラスとシリカ
シラスは、九州南部に分布する鉱物資源でみなさんも中学の地理でシラス台地として習ったことがあるかと思います。シラスは素材として、工業材料としての利用に分けられ、シラスコンクリ―トやタイル等の建設材料に、シラスマイクロバルーンやシラス多孔質ガラスは、ファインケミカルにとさまざまな分野で利用されています。更に、将来的には、省エネルギー電化製品や自動車への実装、環境保全型農業、環境汚染防止材料への利用が期待され、検討が進められています。

シルセスキオキサン
シルセスキオキサンは、シリコーンのなかまでT単位の構造を有していて主鎖骨格がSi-O結合からなるシロキサン系の化合物で、[(RSiO1.5)n]の組成式で表されます。単位組成式中に1.5個(1.5 = sesqui)の酸素を有するシロキサンという意味で[Sil-sesqui-oxane]と称されます。 シリコーンと同じくシロキサンと有機基を持ち合わせているため、耐熱性や硬さなどの無機的な性質と柔軟性や可溶性などの有機的な性質を併せ持っています。