シリカに関する専門技術
シリカと乾燥剤 乾燥剤としてのシリカのメリット・デメリットと活用法
乾燥剤として用いられるシリカの中で、シリカゲルがよく用いられます。シリカゲルはその特徴からA、RD、B、IDに分類され、乾燥にはA、RD形が好適です。一方、B形シリカゲルが相対湿度50%から90%の領域で水分を出し入れすることができるため、別名『呼吸するシリカゲル』とも呼ばれ、調湿用途によく用いられています。更に、ID形には吸湿能力は殆どありませんが細孔容積が大きいため、接触によりより多くの水を吸着することができます。
合成シリカとアルコキシシラン
アルコキシシランは、ケイ素にOR基が結合した化合物の総称で、シリコーンや半導体製造には不可欠な材料です。しかし、金属ケイ素を経由して作られるためコスト削減が課題です。このため、シリカからの直接合成が昭和50年代から検討されていますが、いまだに工業化されていません。シリカからアルコキシシランを容易に合成できれば、シリカ産業の更なる発展が期待されます。私も、シリカの専門家のひとりとして期待しており、微力ではありますが貢献できたらと考えております。
シリカとお酒 ~ビールを中心に~
シリカとお酒は密接な関係があり、特にビールには欠かすことのできない素材です。ろ過工程に使用されていて、発酵を止めるために酵母を珪藻土に吸着させます。この方法は、ビールを加熱することなく発酵を止めることができるため生ビールの製造には不可欠です。また、シリカゲルは、ビールの泡蛋白は吸着せずに、冷却によりオリや濁りの原因となる寒冷混濁蛋白を選択的に除去することができ、比表面積や細孔容積、細孔直径、更には表面吸着水をコントロールすることにより、更なる蛋白吸着能力と選択制を向上させたシリカゲルも開発されています。
シリカと食品 ~微粒二酸化ケイ素を中心に~
食品添加物である微粒二酸化ケイ素は、確認試験、純度試験等の安全性については厳しい規定があり、かつ認可された工場でしか製造できません。しかし、基本物性については平均粒子径15μm以下という制限以外に比表面積、細孔容積等に制限がありません。このため、シリカゲルをはじめ、沈降性シリカ、フュームドシリカタイプのものが上市されていて、それぞれに特徴があります。
金属不純物の測定法その2 ~比色定量法を中心に~
合成シリカ中の金属不純物の測定法は、原子吸光光度法等の機器を用いた分析法、比色定量法に大別され、今回は比色定量法について解説をしていきます。金属不純物の測定は、これまでの個別分析からリスクアセスメントに基づいた分析法に変わりつつあり、そちらの動向についても解説します。
シリカ中の金属不純物の測定法その1 ~原子吸光光度法を中心に~
シリカの分析規格に定められている金属不純物の分析方法は、原子吸光光度法やICP発光分析などの励起スペクトルを用いた分析と比色定量によるものに大別されます。今回は、原子吸光光度法やICP発光分析とシリカに特有の分析の勘所につい解説します。更に、検量線法については、標準添加法、内部標準法についても詳しく解説をします。
金属不純物の測定法 ~シリカの前処理~
それら金属不純物をどのように抽出してどのような手法で求める方法、中でも前処理はシリカの金属不純物測定には非常に重要な操作となりますので、今回はシリカから金属不純物を抽出するための“前処理”を中心に解説します。
合成シリカと金属不純物
合成シリカの内、乾式シリカであるヒュームドシリカは、四塩化ケイ素に水素と酸素を吹き込んで燃焼させる火炎加水分解法で製造されるため、金属不純物量は非常に低いものとなります。
一方、シリカゲルや沈降性シリカなどの湿式シリカは、フュームドシリカに比べて金属不純物が多く、ケイ酸ソーダや硫酸からの原料由来が多くを占めます。特に、ナトリウムについては、ケイ酸ソーダ製造時に添加する炭酸ナトリウムからのものになります。更に、ケイ砂からの由来として、鉄、チタン、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムなどが挙げられます。
合成シリカと細孔
合成シリカの細孔は、シリカゲルのように一次粒子が集まって形成されるもの、ヒュームドシリカ、沈降性シリカのように二次粒子が集まって形成されるものがあります。また、メソポーラスシリカのように鋳型を用いる方法、多孔質ガラスのように金属をリーチアウトさせる方法と、さまざまな方法があります。合成シリカは、粒状や粉状のものが多く、これらの細孔容積や細孔径を測定する方法には、細孔にガスや液体を入れて測定を行う方法がありますが、どれも一長一短ですべてに対応できる方法は現在ありません。このため、細孔容積や細孔径を測定する場合、適切な測定法を選択する必要があります。
合成シリカと表面積
一般に合成シリカの比表面積は、BET吸着法を用いて測定されます。
BET吸着法は比表面積のほか細孔容積、細孔径、細孔径分布を求めることができるため、比表面積とあわせて合成シリカの構造決定に不可欠な分析方法となります。
また、化学工業で使われる反応触媒、コピー機のトナー、電池、インクなどさまざまな化学製品にも用いられています。